「65年はあっという間だった」と話す深谷、きみ江ご夫妻 (令和2年9月13日 明知下公民館にて)





区民だより編集委員・伊藤 (以下 伊藤) : 深谷さんのブドウ園では何を栽培されていますか?

深谷 (以下 : うちは巨峰を中心に、シャイン・マスカット、デラウェアを栽培しています。
 直売をているので、他にも少し栽培してますが、この3つが柱ですね。
 始めた頃はデラウェアしかなかった。他にベリーAという品種もあったけど、デラウェアが中心だった。栽培するのに土地が合っていたんだね。
 高岡地区にも多かったが、明知下では西山地区中心(今の平成地区)に広まった。

区民だより編集長・広瀬 (以下 広瀬) : 西山は県有地だったということですか?

 : 払い下げにあって、みんな土地を持っていた。そこにデラウェアを植えたのです。他にもお茶や柿も作っているけど、ブドウが圧倒的に多かった。

 
 シャイン・マスカットは世界派


 売れ行きトップは、シャイン・マスカットです。

 シャイン・マスカットはこの数年の間に、巨峰を抜いて急激に普及してきた。
 今では全国区というより、世界中に名が知れている品種です。
 明知下の土地に合っているのだろう。
 あまり難しい課題を抱えていない作りやすいブドウです。







 クルガン・ローズ(カッタクルガン×赤嶺 欧州種)という一粒13gぐらいの
赤い楕円形のブドウがあります。
 糖度は26度ぐらい。
 でも夜の温度が下がらないので、赤みがこない。
 明知下にはあまり適してない。





 その点、クィーン・ニーナ(安芸津20号×安芸クィーン)という赤いブドウ
も作っているが、その中では色がつきやすく、育てやすいブドウです。
 果皮色が赤く、肉厚・種なしの大粒ブドウです。


        さんの直売所で栽培されている巨峰(令和2年8月22日撮影)


 
果肉は甘く、酸味の少ない「クィーン・ニーナ」(令和2年8月22日撮影) 

伊藤 : さんおすすめのブドウは何ですか?

 : ウィンクというブドウがあります。
 ルーベルマスカット×甲斐路を掛け合わせたもので、1998年に商品登録されました。
 粒は楕円形の大粒で細長く、赤黒い果皮色をしていて肉厚。
 皮は薄くて口に残らない。少々酸味があります。
 糖度は20度ぐらい。巨峰より甘いが、口当たりがよくしつこくない。

 つやがあって、宝石のよう。
 女性向きのブドウですね。
 うちは木が3本あります。でもこのブドウ、病気に弱いです。

 同じブドウでも、井ヶ山(直売所のあるところ)は色むけど、平成は色まない。

広瀬 : 地質の関係でしょうか?


  
 
 さんおすすめのブドウ 「ウィンク」 (令和2年9月13日撮影

 :ブドウの木が好きなので、暇があると木々を眺め話をする。

広瀬 : 木の機嫌の悪いときありますか?

 : 今年暑かったから怒っているとか、木の状態がそれなりにわかる。
 毎年気候条件が違うので、今年は良くても来年はいいとは限らない。
 それも一つの栽培の援助だと思っている。

 当時栽培していたデラウェアに、ジベレリンを使って種なしにするという作業を昭和35年に導入した。
 その前の年に伊勢湾台風が来て、この辺りは風が強く、ブドウの木の葉がみんな落ちてしまった。
 おかげで木が弱ってしまい、そこに薬を付けたものだから、この年は全滅だった。
 辛うじて、深谷善春さんの所のブドウだけがいくらか収穫できただけだった。
 立ち直るのに3年かかったよ。
 3年後あたりから、まあまあのブドウが採れるようになった。

深谷 きみ江(以下 きみ江) : 私は昭和34年の伊勢湾台風の次の年に明知下に来ました。
 65年間ブドウ栽培をしてきたが、災害もなく、多かれ少なかれ食べていけました。

伊藤 : 大変な時にお嫁に来たのですね。。。




伊藤 : 以前ブドウの盆栽を作られていましたが、今も作って見えますか?

きみ江 : 作ってます。今年8房なった盆栽を、名古屋の方が買っていかれました。

伊藤 : 8房ですか?!すごいですね!
 以前公民館の窓口にいただいた盆栽は、巨峰が3房なっていたのですが、水やりだけで3ヶ月持ちました。
 もちろん、水だけなので味はありませんでした。
 ブドウが終わった後は根が出ているので、庭に植えて果樹として楽しめます。
 とても珍しく、もっとみなさんに知ってもらいたいです。
 来年もう少し作って、人が集まるところにお披露目しませんか?
 是非、お願いします!

きみ江 : そうですね。来年頑張ってみますか。





編集後記

十数年前、さんからブドウの盆栽をいただきました。
最初に見た時、とてもびっくりしたのをまだ覚えています。
枯れないように大事に大事に育てて、11月末辺りまで観賞できました。
公民館に来るお客さんは、珍しがって触っていかれるのですが、粒が落ちないかヒヤヒヤものでした。
ブドウの盆栽なんて、知らない人はたくさんいます。
もっともっと観賞用として広まってほしいです。

(区民だより編集委員 伊藤)

 
  ブドウの盆栽 (深谷 さん提供)


農園直売所の地図はこちらからどうぞ



参考  明知下区誌

場所  明知下公民館
聞き手 区民だより編集委員長・委員
 

                       


インタビューを振り返って


今、ブドウが熱い!!

 とある大手スーパーの食料品売り場に行ったら、シャイン・マスカットやピオーネが2,000円、3,000円で売られていた。それも山積み状態で売っている。
 驚いて近くにいた店員さんに聞いてみた。

 「ブドウ高いですね。こんなにたくさん売れるのですか?」

 「房の形からしてこの値段でも安い方だよ。だいたい完売します。」

 「ふぅ~ん。。。」

 ここでこの値段だと、名古屋では3,000円~4,000円。東京だと4,000円~5,000円するのだろう。

 もう1パック500円のデラウェアの時代ではないのだ。
 
 お客さんは珍しいもの、美味しいもの志向になり、高級品大粒ブドウが飛ぶように売れる。
 以前は巨峰が主流だった。わずか4、5年でいろいろな種類の大粒ブドウが出回っている。

 今回取材した新しい品種のブドウは6種類。
 どれも大粒で、それは見事な美形であった。

 そんじょそこらの気持ちではブドウ栽培はできない。
 明知下も後継者不足で次々とブドウ農家が減っていく中、子供のように手をかけて、愛情かけて、気持ちを込めて栽培している二組のご夫婦に感動した。

 「グレープキング明知下」に幸あれ。



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